相変わらずの私とあなた 〜TRICK トリック劇場版2〜

どうしてもやらなければならないこと、やりたいと思っていることが山積みになればなるほど、人はどうでもいいことに向かってしまうものらしい。
いや、人はじゃなくて、私ね。


どうでもいい映画が悪いわけじゃない。世の中名作ばかりでも成り立たないものだ。
しかし、まあ、つまらなさすぎてすばらしい。
煮詰まっている頭が晴れたような気さえする。


実はテレビ放送時は初期の頃からファンであった。
特に最初のシリーズにはどっぷりはまって、見逃した回は録画してまで見たものだ。一見超常現象に見える事件のトリックを解明する、というストーリーは毎回バラエティに富んでいたし、トリックにもそれなりに説得力があった。事件は解決するものの、いつも必ず後味の悪い幕切れを迎える脚本もよかった。ずれた会話やギャグでシリアスさを茶化しながらも、どことなく陰鬱で刹那的。それがいかにも深夜枠という感じで、サブカル好きな少年少女には魅力的だったのだ。
当時堤幸彦氏は「ケイゾク」で絶好調の頃(だったと思う)で、TRICKにもその雰囲気が引き継がれていたのだろうと思う。


しかし人気が出るうちにシリーズを重ね、ゴールデンに進出し、はては映画化もされるようになるうちに、質はどんどん落ちて行った。内容は薄くなり、キャラクター像はぶれていき、トリックのネタは使いまわされるようになる。
そう! TRICKなんだからそこは頑張ってほしかった。特に「村が消失」「島が消失」のネタは何度使う気なんだと言いたい。第一シリーズでも見たし、ケイゾクの映画でも見た。そのうえ、さっき見た劇場版2にも同じネタがあるのにはひっくり返りそうになった。
もしかして、笑うところだったのかもしれないけど……


前作の映画、最初の劇場版も評価は低かった。確かに、小劇場ノリの小ネタや楽屋オチの連発、しつこいくらいの他作品のパロディシーンに、ファン以外は置いてけぼりになるような作品だった。しかし、それでも劇場版2よりはマシだったかもしれない。


かつて流れていた頽廃的な雰囲気は今はもうなく、ただただ笑わせよう、感心させようというシーンが続くのでうんざりする。これはもう長年のファンであっても、最後まで見るのはつらかったのではないだろうか。それでも、広がらない話を一生懸命膨らませようという努力が感じられ、続けるというのは大変なことなんだなぁ、としみじみ思ったりした。


それでも、結局最後まで見てしまったのは、やはりキャラクターの力だろう。上田と奈緒子、というキャラクターに愛着があればこそ、ついつい二人が動いているところを見たくなってしまう。キャラクター作りに成功するってすごいことだ。いったんハマれば、もうどんな形でもいいから見たい! ってなるんだもん。


TRICK 劇場版2」でよかった探しをするなら、ひとつは片平なぎさ。後半、泥の沼に身を投げる直前の表情、演技には、ついうっかりグッときてしまった。周りが演技できなさすぎの人ばかりなので、ものすごくうまく見えてしまう。しかし本当に演技はみんなひどかったな。すがすがしいくらいにひどかった。


もうひとつは、河川敷のラストシーン。追いかけてくるのがわかってて何も言わない上田も、なりふりかまわず追っかけていく奈緒子もよかった。ここだけ、シリーズ当初の二人に戻ったみたいで、思わずニヤニヤしてしまう。追いかけっこで終わる、ってラブコメものではベタすぎるけど、やっぱいいよな。個人的には、抱き合ってキス、よりもラブラブな感じがする。こういうシチュエーションに過剰に反応してしまうのが、私のトラウマというか、ツボなんだと思う。



もーそれにしても、この文章投稿するのに二回もデータが途中で消えた。
結局数時間、この映画のために費やしたわけで、そういうバカバカしさが、今はこの朝の光のなか、気持ちがいい。

トリック -劇場版2- 超完全版 [DVD]

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