それでも村上春樹がダメな人へ

村上春樹ってダメ」という人に対して、
村上春樹の良さを伝えるのは案外難しいです。
他の作家だったら、弁護したり反論したりできるのですが、村上春樹の場合は難しい。

ていうか、村上春樹の場合、好き嫌いというよりも「縁があるかないか」と言ったほうがいい気もします。

「縁がある人には徹底的にある」「縁がない人には徹底的にない」
そんな作家なのかもしれません。

だから「縁がない」人はたぶん人生において村上春樹を必要としない人なわけで、そのまま知らなくてもまったく問題はないわけなのだけど……。ファンとしてはそれでも世の中に蔓延する誤解だけは否定しておきたいというか……。まあ、自分の気を晴らすためだけになんですが。


まず一つ

村上春樹の書く話において、確かに「苦労しないでなぜか女の子にもてる」主人公はよく出てきますが、そしてそいつが時にキモいセリフを言ったりするのも事実ですが、それだけが彼のストーリーの要ではありません。


……まず一つとか言ったけど、まあ、これだけに絞ってもいいくらいだな。くれぐれも村上春樹文体のコピペだけ見て、嫌いにならないであげて。その通りのものは出てくるけれども。それはただ話の一部であって、話の本質そのものではないのです。


●そういう感情移入の難しい主人公を通してこそ、本当の「孤独」を描こうとしているのです。

実際、村上春樹の話に出てくる主人公の思考回路というのは、時に不可解で、謎です。でも、だからこそ、あり得ないような不思議でシュールなストーリーを進めることができるわけです。

ていうかですね、フィクションだから、「いけすかない奴」が主役でもいいわけです。それすら虚構の世界の一部なんです。

主人公だからって、常に「まっすぐで純情で、恋愛には不器用で、常識的な考えの持ち主」でなけりゃならないってわけでもないでしょう。

●「ノルウェイの森」しか読んでない人は、「羊たちの冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」を読んでみてください。青春小説と恋愛小説が嫌いな人には、特におすすめです。

うん、まぁ……こんなところですね……。


あ、基本的にこれらの弁護は、「キモい主人公」が嫌いだという人だけに言いたいだけです。

「話が奇想天外過ぎてついていけない」「意味不明だから嫌い」「感情移入不可能」という人に対しては、ある意味まったくその通りだったりするので、特に異論はありません。


まーねー。確かにキモいんだけどねー。

●最後に「ダンスダンスダンス」のあらすじ

フリーライターである「僕」は、妻と離婚したあと、幾人かの恋人と付き合ったが、空虚な心を埋めることができない。「こんなことがずっと続くのか」と絶望していた時、夢を見る。何年か前に、短い時間かかわりのあった女と、北海道のホテル「いるかホテル」の夢。

夢から受けた啓示で、「僕」は北海道に向かう。今の自分を捨て、生きた、血の通った人生を求めるために。

「いるかホテル」を目指して旅を始めた「僕」は様々なトラブルや出会いに遭遇する。これまで止まっていたときが動きだすように、新たな「運命」が動き始める。狂った時計のようにめまぐるしく。
僕は、運命の導くままに「踊る」が、はたしてその行き着く先はどこなのか。誰が死んでも、誰が不幸になっても「踊る」ことは途中でやめられず、「僕」はどんどん深みにはまっていく。行く先々で姿を見失う彼女は、本当は誰なのか。


ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

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