波長

特に早口でもないし、声が小さいわけでもない。
それでも、何を話しているのかがなぜか上手く聞き取れない。

そんな人のことを、相方M氏はよく、「波長があわない」と表現する。

つまり、感性が違いすぎて意志の疎通ができないということ。
たとえ同じ日本語を話していても、心の距離が遠すぎると言葉が通じないこともある、と考えているみたい。

私は意外に感性100%の人というわけではなく、意外に理屈屋である。
「なんとなく」という理由を、できるだけ論理的に解明したい、と思っている。
「雰囲気」とか「オーラ」とかいうのも、単に外見から受ける印象のことで、本当に目に見えない空気や霊気が出ているわけではあるまい。

なので、「波長があわない」というのは、具体的には「話す呼吸、タイミングがあわない」、ということなのだろう。

だとしたら、会話のスピードを合わせたり、相槌をうまく打てば、解決じゃない?
どんな相手とでも、テクニックさえあれば、うまく話せるってことじゃない?と、M氏に可愛くないことを言って食いさがったりもする。


実際、相手のテンポをつかみさえすれば、なんかコミュニケーションが取れるようになるのは確か。
誰もが、「あのお爺ちゃん何言ってるのかわからない」という人でも、コツさえつかめば会話が成り立つようになる。

が、それでも、ごくたまに相手の言ってることがまったく頭に入ってこないことがある。
やばい聞かなきゃ、と焦るけど、不思議なくらいその意味がわからない。とぎれとぎれに聞こえる単語は、もちろん聞きなれた日本語なのに。

おそらくそういう人は、自分とはまったく違う次元に生きている人なんだろうな、と思う。
世界観や人生観を、私の言葉には置き換えられないような人。
もしくは、感情を動かすポイントがまったくあわない人。お互い、「えっ」「えっ」ってなるような。

そういうのはやっぱり、「波長があわない」人、というのかもしれない。