今更なあ、と思うレビューその1 「1Q84」

村上春樹で今までの作品で一番好きなのは「国境の西、太陽の南」。
その次に「ノルウェイの森」。

村上春樹について私なんかが語ることは今更ないのは承知だが、個人的に、彼が書きたいテーマというのはいつも

「どんなにほかのことが上手くいっても、最愛の人と結ばれることだけは叶わない」

ということなのだと思ってる。
主人公の「僕」はいつもマイペースでそれなりに豊かな生活を送っている。世の中の面倒なことをのらりくらりと交わし、渦中にいる人々のことを人ごとのように眺めている。

特に努力もしないのになぜか女にもてるし、お金にも苦労しない。
そういう彼ら主人公(だいたいいつも同じキャラ)は、人によってはむかつく奴としか思えないかもしれないし、もしくは理想的な生き方をしているもう一人の自分に見えるだろう。

しかし、「僕」はいつも「本当に好きな人」とだけは一緒になれない。だから、どんなに誰かに愛されても、目に見える苦労をしなくても、「僕」は孤独だ。

村上春樹の書きたい悲しみは、そこにあるように思う。

1Q84」のメインテーマもやっぱり同じだと感じた。

どんなに愛して求めても、手に入れられない愛こそが純粋な愛。だからこそ、一瞬の邂逅が、永遠の孤独を癒す。そんな感じ。


ストーリーのこととかキャラクターのこととか、色々書こうと思ったけどやめた。
よく分からないから。ていうか、シュールとか不可解とかそういうんじゃなくて、ストーリーがまだ終わってない。

1984年のパラレルワールドである「1Q84」年。
近過去小説というアイデアは面白いし、微妙に歴史が変わっている世界、という設定も面白いけど、それがどういう意味を持っているかが分からない。
ていうか、意味を説明する気がないとしか思えない。そういうところがついていけないんだよなあ……。シュールで不可解な展開というのは好きだけれど、それは作者の設定上は完璧に世界ができているのが前提。
ただ単に意味が分からないのは困る。私が理解できなかっただけかもしれないけど、せめて伏線は回収しなきゃいけないと思うんだ。

まさかこれで終わりなわけないよね、と思ったら来年第3部が出るみたい。
なんだかんだ言って、楽しみにしてしまう自分が悔しい。