etude for everyday objects 〜音と所作が人を満たす〜

すっかりご無沙汰してしまったので書くことがたくさん溜まってます。
まずは、7/25に行ったサウンドアーティストmamoruくんのイベント
「etude for everyday objects」のことから。

http://blog.livedoor.jp/soundartist77/


mamoruくんのことをなんと説明すればいいのだろう。
彼は「音の芸術家」だけどミュージシャンとはちょっと違う。
(ミュージシャン的な要素ももちろんあるのだけど)

それは、「音楽」になる前の「音」たち。

人の心を揺さぶる音。記憶に直結している音。もしくはただ純粋に美しい音。
たとえばそれは水の流れる音、子供の笑う声、ガラスが触れ合う音、紙のこすれる音。

彼のアートは音を発見し、組み合わせ、増幅させる。
自然な音、もともとそこにある音を、アンプとサンプリングを駆使して私たちに差し出してくれる。

私たちは、音を聞くとどうしてもメロディを関連づけてしまう。
mamoruくんは敢えて音をメロディという形にはおさめない。
優れた演奏家が出す音が「作られた音、計算された音」なら、
彼の出す音は「自然発生する音、音そのもの」だ。

彼のライブに行くと、音が単なる音でなく、色や匂いや、感情を持っていることに気づかされる。
炭酸水のはじける音、皿に丸まったラップがほどけていく音は、生命を持っている。


今回のイベント「etude for everyday objects」は、半年間ヨーロッパ遠征をしていたmamoruくんの報告会を兼ねたライブ。

mamoruくんファンにはおなじみの「No.7」ことストローを使った演奏。
それがオーストリアやオランダの人たちに受け入れられたエピソードはこちらもうれしくなる。

日常的にあるものを使って音を出す試み「etude」シリーズには、”経済的価値を超えた価値”に挑戦するという意味もあるという。

mamoruくんに手渡されると、ただのストローも素敵な楽器に見えてくるから不思議だ。


今回印象的だったのは、mamoruくんの「おみやげ」。
お客さん全員に試験管を手渡して、氷と炭酸水を順に入れて回り、その音に耳を傾ける。
かすかな音に聞き入ったそのあとは、試験管にヨーロッパのおみやげのシロップ(だった。
ハチミツだったかも…)をひとさじずつ。
最後は琥珀色のおいしいシロップ割をいただいた。


ひとつひとつの過程を大事にした儀式のような空間。
mamoruくんの仕草や言葉には全く無駄がなく、洗練されていたことに感動した。
そのせいでささやかなことが、かけがえのない一瞬に思える。


まさに経済的な価値を超えた”もてなし”の時間。
これって茶の湯の世界にも通じるんでは?
後戻りのない動作の美しさ。


改めてmamoruくんの奥深さを堪能した一日でした。