歴史でたどるあのモノガタリ 〜鎌倉・室町時代編〜

このへんの時代は……、面白いんだけど、改めて考えるとこの時代を舞台にしている作品って、あまり読んでいないことに気付く。
平家の没落、鎌倉幕府からさらに室町幕府へ。源頼朝とか義経とか弁慶とか、ドラマチックなのになー。史実とか、資料をもとにしたテレビ番組なんかは大好きなんですが。なので、鎌倉時代室町時代を一緒にしてしまいました。


●「火の鳥 乱世編」手塚治虫 …… 栄華を誇った過去にしがみつき、死を何より恐れた平清盛を中心としたストーリー。不老長寿を望み、火の鳥を追い続けた清盛の最期が壮絶だった。部屋の周りで僧侶に読経させ、仏像を並べてその指に糸をつけて、その糸の束を握りしめてたとか、そんなシーン。最後に清盛が見る夢がトラウマものでした。子供心に、「永遠の命なんかいらん……」と思ったのを覚えています。また、ヒーローとして描かれることの多い義経がこの作品では結構イヤなヤツだったのが印象的です。


●「白峯(雨月物語収録)」上田秋成 …… 江戸時代に書かれた読本「雨月物語」の中の一編。諸国を巡る西行が、白峯で崇徳院の亡霊と会うというお話。悲運の天皇崇徳院は、絶望と恨みのあまり悪霊と化していて、西行はそんな彼を哀れに思い、説得をこころみる。
崇徳院が、妖怪変化の正体を現す描写がすごいんだなぁ。上品で清らかだった姿が、みるみるうちに髪が伸び、爪が伸び、目も血走って……。怪しく美しく、悲しい怪談にうっとりします。雨月物語の中でも、かなり好きな話。

崇徳院といえば、この和歌が有名です。情熱的で、一途な性格で知られた人だったからこそ、秋成はお話に登場させたのでしょう。

瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ


●「源氏」高河ゆん …… これを入れてもいいものかどうか……。なのですが、一応頼朝も義経も清盛も出てくるし。この漫画で見て初めて知った人物もいたので、歴史の勉強にはなりました。海慶とかね。田舎侍として描かれることの多い木曾義仲をこんなに美形に描いたのもこの漫画くらいなんじゃない?
個人的には建礼門院紱子様が、いかにも悪者で好きでした。長いこと未完だった気がします。果たしてちゃんと終わったんでしょうか。


●「どろろ手塚治虫 …… またまた手塚治虫ですが。「どろろ」は手塚作品の中ではブラックジャックの次くらいに好きな作品。わが子の五体を引き換えに権力を手に入れた父親の代償として、百鬼丸は生まれてきた。生まれつき手足がなく、目も耳も鼻も口も利かない。そんな彼は、巧妙なからくり技術により能力を補い、強い少年に成長した。自分の人間としての能力を取り戻すためには、彼の力を奪った神たちを一人ずつ倒していかねばならない。百鬼丸は、自らの運命に立ち向かうべく旅に出るのだが……。

とにかく百鬼丸がカッコイイ! 悲しい運命背負ってるところにまたキュンとしてしまう。読んだ当時中学生くらいかな?ブラックジャックと同じく、初恋のような感情を味わったキャラクターです。
人間の力を取り戻せば取り戻すほど、弱くなってしまうという皮肉なストーリーもなんか深い。人気がなかったので打ち切られたらしく、終わり方が中途半端なのが不満です。また、大塚英志 原作、田島昭宇 作画の「MADARA」っていう漫画が、「どろろ」にめちゃくちゃ似てるというのが長年の疑問だったのですが、今調べてみたらやっぱり「どろろ」のオマージュとして描かれてたみたいです。


映画は……イメージ壊れるのが怖くて見てない。

火の鳥 乱世編(上)

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現代語訳 雨月物語・春雨物語 (河出文庫)

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源氏 1 (コバルト文庫スーパーファンタジー文庫)

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どろろ (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

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