【再更新!】歴史でたどるあのモノガタリ 〜神話の時代編〜
※さきほど途中でアップした記事を更新しました。
いいタイトルが思い浮かばなかった。
歴史もののマンガや小説について語ろうと思ったのだが、書き始めると意外に数が多い。漠然と”歴史もの”とくくってしまうよりは、どうせなら時代別にまとめてみようという試み。
まあとにかくいってみよう。
〜神話の時代〜
時代順に並べてみて、もっとも古い時代として分類されるこの時代。
正確なところはわからないけれど、日本ならおそらく古事記、日本書記以前と思われる時代設定の作品がこれ。
●「銀の海金の大地」氷室冴子 ……とうとう未完のまま作者が亡くなってしまわれた大河ロマン。いい歳してコバルト文庫の本を読むのは気恥かしかったが、読み応えあった。奴婢の子として生まれた真秀(マホ)は、自らの運命に立ち向かうために生れ故郷を出て旅に出る。古事記をベースにしたストーリーで、それぞれキャラクターが表現豊かに描かれる。「あのエピソードがこんな風に!」と自分の知っている伝承とリンクするのが面白かった。真秀は実は、大和朝廷の首長の娘、とかだったはず。佐保彦と結ばれるあたりまでは読んだけど、その後は未読。最終的にはどこらへんまで進んだのかな。古事記のとおりなら、佐保彦、佐保姫の兄妹は悲劇を迎えるんだと思うけど、どう繋げていったんだろう。古代ものにはよくあることなのだけど、主人公はじめ主要人物がみんな血縁関係。真秀と佐保姫が瓜二つで、さらに佐保彦も兄だから似ているし、といつのまにか同じ顔の人がたくさん出てくる設定になっていた。いくら血が繋がっていても、そんなに簡単にそっくりにはならねーよ。とも思うが、初めて会う義理の兄弟が自分と瓜二つ、というのが物語的にすばらしくドラマチックなんだよなぁ。「実は○○と生き写し」という設定は、京極夏彦もよく使う気がする。
ともかく、古事記の世界を政治、社会、生活含めてリアルに描いた傑作。もし完結していたら、この時代を舞台にしたフィクションでは、唯一といってもいいくらい充実した作品になったのでは。
個人的に好きだったのは、美知主。優しいだけの男じゃない、でも非情すぎるわけでもない、というところが渋い。
●「火の鳥 黎明編/ヤマト編」手塚治虫 ……火の鳥シリーズで私が一番好きなのは「鳳凰編」と「太陽編」なのだけど、このあたりも結構好き。というか、結局「古事記」そのものが好きなのかも。美少年ヤマトタケルが酒の席で女装して敵を撃つシークエンス、すばらしいじゃないですか。このくだりはどんな作家がどんな風に書いていても、ゾクゾクしてしまう。女だと気を許した相手が実は少年で、一瞬のうちに命を取られる、という設定には何か意味があるだのろうか。もしないのなら、どうやってこんなドラマチックなシーンが作られたのだろう。ヤマト編では、卑弥呼がただの強欲な権力者なのがちょっと物足りないかもしれない。ていうか、卑弥呼ってだいたい悪者として描かれているのが悲しい。
●「イシス」山岸凉子 ……山岸凉子の時代もの、というと言わずと知れた「日出処の天子」なのだが、時代順にいくとおそらくこれが一番古代を舞台にしたもののはず。歴史に残るよりもずっとずっと遠い昔、広大な砂漠の王国は、若きオシリス王がおさめていた。しかしその座を双子の弟セトが狙い、王を殺そうと策略していた。シリスの王妃イシスは、夫の命を守ろうと奔走するが、アルビノに生まれついたイシスのことを、オシリスは忌み嫌っていたのだ……。読み終わってから、一般に伝わっている「オシリスとイシスの神話」を知って、「これをこんな話にアレンジしたんだー」と感心した。イシスがアルビノだった、というのは彼女が白髪に描かれている壁画からのイメージなんだろうか。もちろんこの作品はフィクションなのだけど、山岸氏の時代ものはちゃんと取材に裏打ちされているので重みがある。
また、山岸氏のマンガは他の作品でもそうなんだけど、冷淡と言えるまでに客観的。誰か一人に過剰に感情移入は決してしない。オシリスに冷たくされながらも、彼を助けるために命を賭けるイシスの苦悩も、ただ淡々と描かれるだけ。彼女について擁護も弁護もない。だから救いがない。だけどそれこそが山岸マンガ。絶望感にやみつきになります。
●「青青(あお)の時代」山岸凉子 ……同じく山岸氏の、神話時代を舞台にした作品。女王卑弥呼と、その後継者イヨを中心にした物語。面白いんだけど、個人的にはもっと壮大なストーリーにしてもよかったような気もする。キャラクターとしては、反逆者クコチヒコが魅力的だった。
●「孔子暗黒伝」諸星大二郎 ……物語は中国から始まるけど、後半は神話期の日本に舞台が移ります。ていうか、これは難しすぎてよくわからん。なんだかすごい作品だ、ということはわかるんだけど。ともかく、中国ではすでに高度な文化も学問も進んでいるのに、同じ頃の日本がまるで原始的なのが割とショックだった覚えがある。
次は、古墳〜奈良時代あたりでまとめます。
銀の海 金の大地 1 古代転生ファンタジー (古代転生ファンタジー/銀の海 金の大地シリーズ) (コバルト文庫)
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