歴史でたどるあのモノガタリ 〜古墳・奈良時代編〜

私は古墳やら遺跡やらが大好きなので、ロマンあふれるこの時代にはかなり惹かれます。とは言え改めてフィクション作品でと考えてみれば、意外に読んでない・知らないことが判明。ノンフィクションとか、謎解き本はよく読んだんですけど……。この時代ものでは外せない「天上の虹」を未読なのも痛い。何故かまだ読んでないんだよなー。ほかに何かお勧めあれば教えてください。
この時代の衣装とか建物とかのビジュアルも好きだったりします。


●「日出処の天子山岸凉子 …… 言わずとしれたヒット作。何度読んでも厩戸皇子の酷薄な笑みに惚れぼれしてしまう。山岸氏は、こういう”悪人”の魅力を描くのが本当にうまい。主役がこんなに性格悪いのって珍しいんじゃないだろうか。それでも読者は、いつしか皇子に惹かれてしまう。天才の孤独、歪んだ性格。それゆえの不器用でまっすぐな愛情。皇子の深い闇と葛藤を理解すればするほど、ハッピーエンドがないことを確信させられる。幸せになって欲しい人こそ、自ら幸せを断固拒否してしまう。だからこそ、ラストのやるせなさは格別です。扉絵や表紙の美しい絵も個人的に大好き。みずらに結った髪に、生花を挿してたりする皇子ステキすぎる。皇子の一重の切れ長の目、ニヤっと笑った不敵な表情は、やっぱりあのフェノロサが見つけた聖徳太子像がモデルなんだろうか。「日出処の天子」はもちろん思いっきりフィクションなわけだけど、聖徳太子が人々から恐れられていた存在だったという説は、個人的には信ぴょう性あるような気がする。上に書いた飛鳥寺聖徳太子像(救世観音像)は、人の目に触れると天変地異が起こると伝えられていたらしいし。聖人で慈悲深い人をそんなタタリ神扱いするのおかしいでしょ。
あと、絵で言えば番外編の「馬屋古女王(うまやこのひめみこ)」の見開き表紙の絵が美しすぎる。本編の絵が後半、結構崩れてたりギャグっぽくなってたりして物足りないので、たまにこの番外編見ては本編のイメージを補てんしてた。好きなキャラクターは皇子! と馬子。皇子には悪いけど、毛人(えみし)はうじうじしてて嫌い。「ベルばら」におけるアンドレみたいだよね。エミシって。


●「変幻退魔夜行 カルラ舞う! 奈良怨霊絵巻」永久保貴一 …… 正確には舞台は現代なのだけど、平城京跡や石舞台など、数々の奈良の遺跡が出てくるし、大化の改新にまつわるミステリーなど絡んで来て歴史オタクにはたまらない。実は蘇我氏が正当な天皇家だったとか、そういう説ってほんとにあるのかな。
代々霊能力を受け継ぐ翔子と舞子の双子の姉妹が、人に害をなす怨霊と戦うホラーアクション(?) 昔「ハロウィン」ていうホラー漫画専門の月刊誌にはまっていた頃に夢中で読んだ。グロい描写も多かったけど、どちらかというとホラーというよりエンタメ要素の強い作品。双子が連携して戦うシーンとかワクワクした。小声で呪文を真似したりして。個人的に好きなキャラクターは近江くん。修行に出たあと、立派な退魔師になれたんだろうか。カルラ舞うシリーズはこれ以外にもたくさん出てるはずだけど、ちゃんと最後まで読んだのはこれだけ。機会があれば一気読みしたい。


●「道鏡坂口安吾 …… 坂口安吾の時代小説で一番好きなのは「イノチガケ」と「狂人遺書」なのだけど、この作品もかなりの名作。究極のお坊ちゃまとお嬢様の夫婦、聖武天皇光明皇后との間に生まれた女帝、孝謙天皇。最高の地位にある女性ゆえ夫を得ることのできない彼女の運命は、「処女王」エリザベス一世にちょっと似ているかも。しかし安吾は、孝謙を気高く聡明な帝であるとともに、無邪気で純真な女性として描いた。あまりにも高貴に育てられたために、疑ったり遠慮したりすることが全くない彼女は、初めて得た恋人、道鏡に夢中になってしまう。道鏡もまた、生涯に一度の恋に誠実で純粋であった……。スキャンダルとして描かれることの多い孝謙天皇道鏡の恋を、汚れなき純愛として語るところが安吾テイスト。安吾は基本的に、恋するものの味方なんだよな、と思う。


次回はいよいよ平安時代編!

日出処の天子 (第1巻) (白泉社文庫)

日出処の天子 (第1巻) (白泉社文庫)

カルラ舞う!―変幻退魔夜行 (1) (秋田文庫)

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