「ゆきがやんだら」 酒井駒子

まだ寒さが残っているうちに書いておきたいレビュー。


酒井駒子の描く子供の可愛らしい表情やしぐさの絵は、心をなごませると同時に、見る人にどこかせつない気持ちを呼び起こす。

両親と一緒に団地で暮らす、幼稚園生の「ぼく」。
パパが出張でいない朝、外の世界は降りやまない雪に覆われていた。
幼稚園は雪のために休園。外に出て遊びたいけれど、ママに「雪がやむまで出てはいけない」と止められる。


不意の休日。父親の不在。母親と二人きりの家で過ごす一日。
選び抜かれた言葉と絵が、開放感と心細さが入り混じった、懐かしい暖かさを思い出させてくれる。

キャラクターはうさぎの親子として描かれているが、何の違和感も感じない。
リアリティとかメルヘンとかそういうことを読者に考えさせず、「この話にはこの絵しかありえない」と思わせるのがすごい。
絵と文を同じ作者が描くから生まれる説得力だろう。


本のちょうど中心、見開きのページは圧巻。
これを描きたい、これを言いたいからこの絵本があると言ってもいい。

「ぼくとママしかいないみたい、せかいで」


しかしこれ、子供が読んだらどう思うんだろう。
意味もわからず、せつなく泣きたい気持ちになるんじゃないだろうか。
いや、そんな反応をするのは、かつて「子供」だった私たちだけなのかもしれない。子供は素直に、夜の雪原を走りまわるラストシーンにワクワクするのだろう。


「現在の子供」にむけて、というより、「大人の中にいる子供」に強く何かを訴えかけてくる作品だと思う。


今、酒井駒子作品にはまっている。最新刊の「くまとやまねこ」も、購入予定。
グレーとピンクの色合いがすばらしすぎる。

話も絵も、どちらも高水準の作家の一人。

ゆきがやんだら (学研おはなし絵本)

ゆきがやんだら (学研おはなし絵本)

くまとやまねこ

くまとやまねこ