読書 備忘録【宮本輝 「にぎやかな天地」上下巻】

読んだ!感動した!ちゃんと感想書こう!とはりきってしまうと
結局あれこれ迷って書かないまま終わってしまうので
推敲せずメモ程度に残すくらいがちょうどいい。
ネタばれ全く気にせずのびのびと書いてしまってるので、ご注意下さい。

宮本輝 「にぎやかな天地」上下巻】
久しぶりに宮本輝作品読んだ。さすが。この人はあくまでも技巧や流行には走りません。
言葉遊びの世界にもいきません。昔から一貫して、「生きてる人間」を「具体的に」描いてます。

フリーの編集者の主人公が、ある資産家に依頼されて作り始めた「日本の発酵食品」についての豪華限定本。その作成過程で主人公が出会うものや、気付いたこと。
良いモノを作るには、一定の「時間」が必要でいかに便利になろうとそれを縮めることはできない。本当の良い仕事とは何か。それを悟った主人公は自分の信じた道を行こうと決心する。
こう書くと、ありふれてる気がするけど、そこに至るまでを丹念に丹念に描いているので、ものすごい説得力があるんですね。まさに、時間をかけた良い仕事。

また、主人公が後半に悟ることのひとつに
かつて災いとしか思えなかった大きな不幸が、実は今の幸福に繋がっていたと知る、というのがあるんだけど、一見信じがたいこの考え方を読者に全く無理なく共感させるのがすごい。
筆力ってやつですね。こういうエピソードは頭で考えてるだけの人には書けないはず。真摯に人生を生きてる人なんだろうなぁ。

「良いことばかりの未来をイメージするのは勇気のいることやなぁ」っていうのもいいね。

しかし、主人公の作る豪華限定本は、今の出版業界にはない本物の内容、本物の装幀で素晴らしいかもしれないけど、私たち一般庶民には見る機会がないじゃないですか。
一部の「本物を知る人」だけが良いモノを知っている、ってことなんだろうけど、果たしてそれでいいの?とは思った。愚民にもチャンスをください。